『真相 マイク・タイソン自伝』ジョー小泉 監訳 棚橋志行 訳(ダイヤモンド社)、読了。
650 ページほどのこの本でボクサーとして上昇していく姿が描かれているのは 150 ページくらいまででしかない。カス・ダマトが亡くなり世界チャンピオンになったそのあたりからは、セックスとアルコールと浪費と暴力の話がほとんどになる。さらに、刑務所を出てからはそこにマリファナとコカインが加わる。
あれほどのボクサーがどうしてそんなことになってしまったのか。あまりにも残念だ。なんてことはこの本を読んでいるとほとんど考えない。次のような文章を読むと、惜しむというような感情は肩すかしを食ってしまう。
だから歩行トレーニングにマリファナとアルコールを組み込んだ。ハイな状態で四十度近い暑さの中を歩いていると、躁鬱病的な性質が顕著になる。酒とマリファナと暑さは相性がよくない。 (…) 一人、サインをもらいに寄ってきたやつがいたが、ボカッとぶん殴ってやった。( 194 頁)
無茶苦茶やがな。こんな話が他にもたんまりと出てくる。ちょっと道を踏み外したとかそういう問題ではないんだろう。それどころか、マイク・タイソンという人格がマイク・タイソンという人生の道のド真ん中を歩いた結果が彼の今までの人生だったのではないのか。そういうことを言うならもちろん誰の人生だってそうなんだろうけれども、それでもやっぱり彼ほど真っ向から堕ち切ってしかも立ち直りつつある男なんてなかなかいないだろう。私にとっては未だにヒーローだ。