『大岡昇平全集 9 』

大岡昇平全集  9 『大岡昇平全集 9 』(筑摩書房)、読了。

『レイテ戦記』の上巻。戦略面から個別の戦闘にいたるまで細密に描かれている。腹の底に重いものを入れられたような感覚のなかで読んでいた。

 敵が上陸を始めた時、初年兵たちは、不意に銃を捨てろと命令されて驚いた。帯剣もはずし、ガソリンを詰めたビール瓶(ずんぐりした形の四分の一リットル瓶である)を一つ右手に持ったままの軽装で、戦車に肉薄攻撃せよというのである。 (…) ( 86 頁)

この装備(とすらいえないものだが)で戦車にむかっていくというは、その兵士にとって正真正銘の「決死」の行動のはずだ。徴兵された身でありながらそんな「決死」の行動をとった兵士が、たくさん出てくる。卑怯な行動もある。そして、受け手によってそのどちらに評価するかわかれるような行動も。

白旗を掲げておいて近寄ってきたアメリカ兵を射つという行動を、太平洋戦線の日本兵はしばしばおこなったらしい。

  (…) しかし白旗は戦闘放棄の意思表示であり、これは戦争以前の問題である。この稜線を守っていたのは、主として病兵より成るタクロバン支隊であった。こうでもしなければ反撃の機会が得られない状態に追いつめられた病兵の心事を想えば胸がつまる。射ったところでどうせ生きる見込みはない。殺されるまでも一矢を報いようとする闘志は尊重すべきである。しかしどんな事態になっても、人間にはしてはならないことがなければならない。( 123 頁)

重い気持ちで今もいろいろと考えている。

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