モラトリアム

twitter だと連ツイで TL をふさぎそうだったのでブログに書いてみる。自分の気持ちの記録。ポエミーになりそう。

もう 2 か月以上トレードしてない。息子の夏休みに合わせて休みを取るのは恒例なんだけど、今年は息子の学校が始まっても私は休んだままだ。

今年は持病がふたつ見つかったということもあって今後のトレードスタイルについてちゃんと決めてから再開しようと考えているうちに時間がすぎていった。本を読んだり、英語を勉強したり、 python で遊んでみたり、筋トレを見直してもらったり、おだやかに暮らしてはいる。あと、農作業を手伝ったり農作業を手伝ったり。

今後のトレードスタイルを決められないのは、今年の 1 ・ 2 月のような超ボラタイルな相場での裁量を捨てるかどうかという最初の選択に答えを出していないからだ。夏休みに入った頃はああいうのはもう避けて静かなトレード生活に入っていくべきかと考えていたのだけれど、ここのところ気持ちがちょっと変わってきている。ボラの匂いが漂ってきてるせいもあるんだろう。

そもそも、超ボラ相場でヒャッハーやるのが好きなのかどうか。わからない。得意ではあるんだけど。恐慌的な動きのときは特に。

とはいえ、アドレナリン全開みたいなトレードを老人になってもやっていくのは嫌だし無理だろうし。自分でルールを決めて自分をそれに従わせるという過程は好きだから、いずれはそういうトレードだけをやっていくことになるんだろうけど、超ボラ裁量とさよならする決心がまだついていない。

まあそんな感じで、答えを出さずにのんびりやってます。で、これを書いていて気付いたんだけど、 twitter とブログ巡回をやめたら超ボラ裁量を捨てやすくなるんじゃなかろうか。

科学で勝負の先を読む 投資からテニスまで先を読むため・読まれないための実践ガイド』 ウィリアム・パウンドストーン

科学で勝負の先を読む 投資からテニスまで先を読むため・読まれないための実践ガイド『科学で勝負の先を読む 投資からテニスまで先を読むため・読まれないための実践ガイドウィリアム・パウンドストーン 著 松浦俊輔 訳(青土社)、読了。

“randamness” についての本。人間はランダム性を認識することが本当に苦手だしランダムにふるまうこともそれに劣らず苦手だということをあらためて教えてくれる。そして、それを知っておくと、いつかどこかですこし有利にふるまえるかもしれない。

  (…) 同じものが 5 回続くほどランダムに見えない組み合わせはない。
 これが「ランダム」と「ランダムに見える」の違いを提起する。 HHHHH (と TTTTT )の出やすさは偏りのない硬貨を 5 回はじいたときに出てくる他のどの並びとも変わらない。「 5 回連続同じ」のほうがランダムではないとは言えない――ただ確かにランダムには見えない。( 46 頁)

『シグナル & ノイズ ――天才データアナリストの「予測学」』 ネイト・シルバー

シグナル & ノイズ ――天才データアナリストの「予測学」『シグナル & ノイズ ――天才データアナリストの「予測学」ネイト・シルバー 著 川添節子 訳(日経 BP 社)、読了。

ペースボール・プロスペクタス社の予測モデル「 PECOTA 」の開発者であり現在は政治予測サイト FiveThirtyEight の主宰者である著者が、野球・天気予報・地震・経済・ギャンブル等のさまざまな分野での予測の現状を取材しつつ、予測というものに対する自らの考えを述べた本だ。私が予測においてなおざりにしがちな点について、この本からいくつかの示唆を得ることができた。

 私自身は、多数が一致した意見――イントレードのような市場がどうなっているか――には注意している。それに執着することはないが、コンセンサスから離れれば離れるほど、「みんなが間違っていて自分は正しい」と思うにいたった根拠が強固なものでなくてはいけない。 (…) ( 406 頁)

人気薄を買うときに雑になってはいけないと反省している。

  (…) ときには自分だけが市場に勝つこともあるが、いつも期待してはいけない。それは自信過剰のサインである。 (…) ( 406 頁)

この本でのベイズの定理の紹介を読んで、私はそれを自分の主観的な確率の見積もりどうしの関係における偏りを知る道具として使えないかというような夢想をしてしまった。勉強してみよう。

ところで、本書は各分野につき 1 章ずつ使ってまんべんなく紹介しているのだがそのまんべんなさが問題で、金太郎飴的に平板な印象を受けて中盤はやや読みだれしてしまった。できれば次は彼自身が行う予測について語ってほしい。 (2015-06-13-19:45 追記 )

『フラッシュ・ボーイズ 10 億分の 1 秒の男たち』 マイケル・ルイス

フラッシュ・ボーイズ  10 億分の 1 秒の男たち『フラッシュ・ボーイズ 10 億分の 1 秒の男たちマイケル・ルイス 著 渡会圭子・東江一紀 訳(文藝春秋)、読了。

マイケル・ルイスらしく、よく取材された良作だった。超高速取り引きやダークプールについて描かれていて、その面では興味ぶかく読めた。ただ、そういう取り引きがアンフェアだというルイスの主張には、あまり共感できなかった。トレードで食ってる身としては、市場でのできごとがフェアかフェアじゃないかなんて考えている心の余裕はない。それでも、そういう問題の解決策のひとつとしての IEX には商業的に成功してほしいとは考えている。

「 (…) たしかに彼らが規制の範囲内でやってきたことは見事だった。超高速取引業者は思っていたような悪党じゃない。システムのせいで堕落しているんです」( 283 頁)

『スタンフォードの自分を変える教室』 ケリー・マクゴニガル

スタンフォードの自分を変える教室『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル 著 神崎朗子 訳(早川書房)、読了。

The Willpower Instinct という原題どおり、意志力についての本だ。

意志力は、トレーダーとしての成績に、最終的な影響をおよぼす。どんなにすぐれたシステムを使っていても、チャートリーディングにおいてどれだけ上達していても、意志力に問題を抱えていては成功はおぼつかない。

といっても、「意志の力」で欲求や欲望や衝動ををねじ伏せようとするような姿勢は、かえって逆効果だ。意志の力というのは、そんなに強いものではない。たとえば、この本のなかで紹介されている研究結果につぎのようなものがある。

2 つのおやつをすぐにもらうのと、 2 分待ってから 6 つのおやつをもらうのとではどちらがいいか選ばせることによって、人間とチンパンジーの自制心を比較するという実験だ。

 チンパンジーも人間も、待つ必要がなければ 2 つより 6 つもらうほうがいいに決まっていますが、待たなければならない場合には、チンパンジーと人間ではその選択に大きなちがいが表れました。チンパンジーはおやつをよけいにもらおうとして、なんと 72 パーセントが待ちました。いっぽう、ハーバード大学とマックス・プランク研究所の学生は、 19 パーセントしか待てなかったのです。( 234 頁)

あなたのも私のも、人間の自制心なんてこんなものだ。トレードになんてまったく向いていない。

そんな欠陥だらけの意志力しか持っていないからこそ、どんな場面で衝動に負けやすいのかを知り、あらかじめ対策をたてておかなければならない。そんな認識と対策のためのヒントをたくさん与えてくれる本だ。「欲求の波を乗り越える」というテクニックは、トレードでも役に立つだろう。

『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』 ポール・タフ

成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのかポール・タフ 著 高山真由美 訳(英治出版)、読了。

貧困層の子供の学力向上に取り組む人たち――教育者や心理学者や小児科医や経済学者など――と、彼らの助けを受けつつ劣悪な環境で前向きに努力している貧困層の子供、彼らへの取材を通じて「成功」するための資質にたいして考察した本だ。

「知能」ではなく非認知的な要素――たとえば好奇心、自制心、社会性といったもの――こそが成功するために重要なのだという近年の主流意見と、著者も見解を同じくしている。たぶんそうなのだろうと私も考える。ではどうすればそういう能力を伸ばしていけるのか。神経科学や心理学の研究結果や先端的な教育施設の活動を紹介しながら、著者はその答えを探っていく。わが子を「成功」させるという観点からではなく、「貧困」層の教育向上という観点から著者は問題をみていて、さまざま点で私は啓発された。

ところで、トレーダーという自分自身の職業にかかわる面でも、ふだんの自分の考えの正しさをこの本で確認することができて、私は意を強くした。

  (…) なぜルールが機能するかについては神経生物学上の理由がある。ケスラーによれば、ルールをつくると前頭前皮質を味方につけることができる。つまり、本能に突き動かされて反射的に働く脳の部位に対抗できる。ルールは意志力とおなじものではない、とケスラーは指摘する。ルールはメタ認知を利用した意志力の代用品である。 (…) ルールはやがて欲求とおなじくらい反射的に働くようになる。( 151 頁)

「精神力で」とか「意志の力で」とか吐かしている阿呆たちは、勝てるトレーダーには永遠になれない。

私は小学生の息子の成績はほとんど気にしないが、息子が習慣を力にすることに関してはかなり気にしている。気にしているだけで、じっさいの教育は妻にまかせっぱなしなのだけれども。「親があっても子は育つ。」

バイナリーオプションことはじめ

バイナリーオプションというのがどんなものか、試してみている。今週の月曜日から始めて昨日まで 4 日間みっちりやったので、そこまでの感想を書いておく。

結論から書くと、かなり儲かる。試しに入金した 10 万円がすでに 30 万を超えている。ふつうの FX ではありえないような勢いだ。

といっても、 5 万円ドーンで 15 万、さらに 5 万円ドーンで 20 万、追い打ちで 10 万どりゃして 30 万円です、なんて経過をたどったのではない。 1 トレードでとるリスクは資金の 5 % と決めてやっていた。つまり、 10 万円のときは 5 千円賭けて、 12 万円になれば 6 千円に増やすという賭けかただ。複利を効かすので、それなりの勝率で回数をこなせば、資金が数倍にふくれあがることは珍しくはない。めずらしいのは回数のほうだ。 4 日間で 80 トレードを超えている。

5 千円賭けて、勝ちなら 5 千円のリターン。長くても 15 分で結果が出る。複数通貨で同時にエントリーすることも可能だから、機会はなんぼでもある。

ふつうの FX だと、こうはいかない。 10 万円の資金で 2 枚建てても、 5 千円ねらえるところとなるとそうそう多くはないだろう。

ということで、 4 日間の短い経験でのとりあえずの感想だが、それなりの勝率を出せるならバイナリーオプションはかなり儲かりそうだ。ただし、勝率が 50 % を切ってしまうと資金がなくなるのもあっという間だろう。機会が多いというのはそういうことだ。あと、こんなに参加者に有利な賭場がいつまでも続くとは思えない。稼げるうちに稼いでおこうと思う。

ウィザードブックシリーズ 170 規律とトレンドフォロー売買法 ――上げ相場でも下げ相場でも利益を出す方法』 マイケル・ W ・コペル

ウィザードブックシリーズ 170  規律とトレンドフォロー売買法 ――上げ相場でも下げ相場でも利益を出す方法ウィザードブックシリーズ 170 規律とトレンドフォロー売買法 ――上げ相場でも下げ相場でも利益を出す方法マイケル・ W ・コペル 著 長尾慎太郎 監修 山口雅裕 訳(パンローリング)、読了。

 トレンドフォロワーのチャーリー・ライトは言う。「長い時間をかけて分かったことは、相場の動く理由も動く方向も本当はだれも理解していないということだ。あなたであれ、ほかのだれであれ、相場の動きが分かると思うのは幻想だ。 (…) 相場がいつ動くかは予測できないという最終結論に達したときに、トレーディングで成功し始めた。私の欲求不満は劇的に少なくなった。相場の予測も理解もできないからといって、何の問題もないと分かり、私の心は穏やかになった」( 377 頁)

上の言葉に、私は深く同意する。ところどころに素晴らしい言葉が出てくる本なのだが、やや散漫でかなり冗長なところを惜しく思った。

チャートの見方

チャートの見方に絶対的な正解はない。自分のトレードの定義にふさわしい見方ができていればそれでいい。逆にいえば、いくら芸術的なチャートリーディングができていても、それが利益につながっていないのなら、意味はない。

まずは自分のトレードを定義する。定義したそのトレードがレンジでの逆張りなら、チャートを見るときに最初に問うべきことは、いまレンジになっているのかどうかだ。自分のトレードがトレンドの押し・戻り狙いなら、まず見ることはトレンドが出ているのかどうかだ。

当たり前だと思うだろうか。納得してもらえるだろうか。こういう話への反応で、その人のトレードのレベルが、あるていどは見当がつく。

『スイッチ ! 「変われない」を変える方法』 チップ・ハース & ダン・ハース

スイッチ !  「変われない」を変える方法『スイッチ ! 「変われない」を変える方法チップ・ハース & ダン・ハース 著 千葉敏生 訳(早川書房)、読了。

(…) これと同じように、大事な約束に二〇分も遅れてハンドルの前に座れば、その人は乱暴なドライバーになるのだ。人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多いのだ。( 242 頁)

トレードで自分の欠点を改善しようとするとき、私は状況や環境の影響をおもく見る。何度も破ってしまっているルールを、決意だけで守ろうとしても無駄だからだ。決意で守れるようになるのならば、そもそも破りはしない。まずは工夫をすべきなのだ。

そういう工夫についてのガイド本だ。広く浅くといった内容なので、この分野に興味を持ちはじめた人むけかもしれない。

ゲームの定義つづき。

トレードというゲームを自分がする、その目的はなんなのか。通常は資金を増やすことだろう。意識的には、という前置きがいるだろうけれど。

では、その目的を達成するために、どんな行動をするのか。目的と手段。これらをきちんと考えておかないと、成功を持続することはむずかしい。

「安く買って高く売る・高く売って安く買う」。これこそ、資金を増やすという目的を達成するための唯一の手段だと思うひとがいるかもしれない。しかし、ある種のトレンドフォロワーなら「高く買ってさらに高く売る・安く売ってさらに安く買う」ということこそ、自分が目的を達成している手段だというだろう。

ウィトゲンシュタインではないが、トレードとは、ボールと棒切れをわたされて何でも好きにしていいよと言われているようなものなのだ。遊びかたは無限にある。オプションをやった人ならわかるだろうが、そこでは、時間を売ってもいいし、ボラティリティを買ってもいい。それらを組み合わせて、多彩なストラテジーを組むこともできる。もちろん、複雑だからえらいというわけではまったくないのだが。

とにかく、相場とはそういう無規定的な世界なので、自分の目的と自分の手段をちゃんと持っていないと、資金を減らしていくことになる。

ゲームを定義することの大切さについて、バイナリーオプションをあげよう。ルール改正前のことだが、ふつうの FX 取り引きよりバイナリーオプションのほうが個人投資家の成績がよいという話を耳にしたことがあった。さもありなん。手仕舞いというトレードの重要な部分について、事業者側で定義してくれているのだ。しかも、損大利小という問題に対処するかたちで。先のボールの例にもどるなら、ゴールを設置してくれて、ここに入ればあなたの儲けで外れれば損ですよと、結果にかんするルールを定義してくれているようなものだ。あとは投げかただけにしぼっていける。まあ、蹴ってもいいのだが。上がるか下がるかしか考えていない阿呆よりは、はるかにスタートラインが近い。

というようなことを書いたからといって、べつにバイナリーオプションをすすめているわけではない。私自身がやったこともない。ふつうの FX だって、目的と手段を明確にしておけばそれでいい。

トレードというゲームの定義

相場で儲けるようになるためには、自分のトレードというゲームがどんなものなのか、自分で定義しなければならない。

といってもこれは、なんとかクロスでエントリーだとか、ナンピン禁止だとか、そういったルールの話ではない。むしろ、いろいろなルールがそこから生まれてくるような、ゲーム自体の定義のことだ。

たとえば、自分はトレンドの押し・戻りをねらう。だから損切り幅はこれぐらい必要で、利益の幅はこれくらい。それなら勝率はこれくらいは維持しなければならない。そういったことだ。こういう考え方から、「自分にとって」入っていい戻りと「自分にとって」見送るべき戻りの区別がはじまる。それは、その後に相場がどう動くかとは、またちがった問題だ。そこから自分のルールができあがっていく。

『ギリシア哲学者列伝(下)』 ディオゲネス・ラエルティオス

ギリシア哲学者列伝(下)『ギリシア哲学者列伝(下)』ディオゲネス・ラエルティオス 著 加来彰俊 訳(岩波文庫)、読了。

(…) さらにまた、どのような状況のもとでは人は心を乱さずにいることができないか、 <また同様に、どのような状況のもとではそれが可能であるか> ということについて無知な人たち、そのような人たちすべてを、われわれは軽蔑しなければならない。 (…)( 265 頁)

エピクロスのこの言葉は、トレード手法を身に付けるときの本質を突いている。のではあるが、まだ負けている人にはこういう言葉の意味はわからないだろう。

この巻も多士済済で楽しく読めた。二流以下の本としては上出来だ。

 「さらに、思慮ある人は、よく考えることもなしに行動して幸運であるよりも、よく考えて行動しながら不運である方が、まさっていると信じている。 (…)( 308 頁)

『習慣の力  The Power of Habit 』 チャールズ・デュヒッグ

習慣の力  The Power of Habit 『習慣の力  The Power of Habit 』チャールズ・デュヒッグ 著 渡会圭子 訳(講談社)、読了。

(…) 試合中、選手があまりにも多くの決断をくだすのをやめさせたい。彼らが反射的に、習慣的に反応できるようにしたい。 (…) ( 99 頁)

NFL の有名コーチであるトニー・ダンジーのこの言葉は、私がトレードで目指している姿にとても近い。いつも言っているように、トレード中に複雑な判断をしなければならないようではどうしようもない。そんなことでは一貫性なんて期待できない。

たとえば、ダンジーが指導するまで各選手は相手チームの動きを全体的で複雑なものとして予想していた。ラインバッカーの場合だと、ガードはフォーメーションからはずれるだろうか ?  ランニングバックはこれから走るつもりなのか、それともパスするかといったようにだ。これではもたついてしまうことがあるダンジーの目的はブルックスの頭をこの手の一切の分析から解放することだった。全体を同時に考えるのではなく、順番に個々に判断していくのだ。

 これは比較的ささやかな変更だ。――ブルックスの目は同じきっかけに向けられるが、 1 度に複数の場所を見るのではなく、見る順番を決めて、それぞれのカギを目にした瞬間にどの選択肢を即座にとるべきかを教えた。このシステムが優れているのは、意思決定を不要にしたところだ。おかげでブルックスは今までより早く動けるようになった。すべては選択というより反応であり、それがのちには習慣となるからだ。( 124 頁)

習慣になってしまうと、それを実行するのは容易になる。意志力を必要としなくなるからだ。

 意志力が習慣になる過程はこうだ。ある行動を事前に決め、転換点が来たらそのルーチンに従う。( 206 頁)

意志の力でルールを守るのではなく、ルールを守ることが習慣になっている。そんなふうに生活とトレードを組み立てるためのヒントをこの本からいくつかもらった。

『確率論 (ケインズ全集第 8 巻)

確率論 (ケインズ全集第 8 巻)『確率論 (ケインズ全集第 8 巻)佐藤隆三 訳(東洋経済新報社)、読了。

(…) 個々の事例に付随する状況についてなんらの分析も行わないで, ある与えられた事象が観測された 1000 個の事例においていつも生起したという事実のみから, それは未来の事例においてもつねに生起することは確からしいと推論することは, 類比を少しも考慮に入れていないので, 弱い帰納的推論である. ( 465 頁)

確率を根本から問うた本だ。それを計量可能なものに限定せず、論理学的に徹底的に形式化することからはじめている。ケインズの最終的な目標は実践的なところにあったと思うのだが、そのためにこそこの本では形式化を徹底してやる必要があったのだろう。

数学と論理学の素養が皆無である私には、頭から煙が出るんじゃないかと思うほどに難解な本だった。それでも、ずっと興奮しながら読みすすんだし、確率について数えきれないほどの示唆をあたえてくれた。どこを開いても考えるヒントに満ちている。今回はノートもろくにとらずに通読しただけなので、何年かのうちに精読するつもりだ。

ただ、そのためには基礎学力をもっとつけないと話にならない。数学は、息子の成長にあわせて、算数からいっしょにやっていくとするか。

そして、フレーゲとラッセル。そこからまたウィトゲンシュタインへ。

(…) 推論はすでにもっている推定の根拠を強化することしかできない. それは予想を生み出すことはできない. ( 485 頁)

インディケーターのパラメータいじりがなぜダメなのか、よくわかる言葉だ。

ボブ・ボルマン

preppy で手写したというのはボルマンの本だ。子どもが夏休みのあいだ、テーブルの向かいに座って勉強につきあいながら、ずっと書き写していた。私自身は 70 ティックチャートをもう見てはいないしこれから先も見ない気がするが、あの本についての記事で書いたように、あの本には違う時間軸でトレードするトレーダーにとっても有効な教えが詰まっている。まるまる一冊を書き写すことで、読んだだけのときよりそれを深く理解できたし、それを活かせてもいる。素晴らしい本だ。

しかし、なにげなく検索してみたところ、憫笑するしかないような人を目にしてしまった。一貫性とかトレンドとか全体の圧力とか確率とかいったボルマン自身があの本のなかで口を酸っぱくして語っていることを理解できず無視して、逆張りがどうとかわけのわからないことを言い散らしては一貫性と確率的思考に欠けることを延々とやっている。おまけにレンジを形成していないところでレンジブレイクを観察してみたりと、値動きをの基本すら身についていない。まあ、なにか学習するときにきちんとした順序を踏めないで勝手なことをやってそれなのに自分では正しい努力をしていると思い込む人ってのは必ずいるわけで、だからこそ凝り固まって「著者と同じチャート環境にするには」とか「なんとかセットアップの定義がうんたら」とか、表面的なことにこだわる頭の弱い人にはかえって害になるかもしれない。と書いておいたわけだけれど、それにしても私の言葉に当てはまりすぎだろうと思う。

そもそも、他の手法で勝っている人なら、トレードにおける上達のしかたを知っているはずだから、あるていど着実に前進していける。あるいは、トレードの初心者であっても、何かをちゃんと身につけた経験のある人もそうだろう。しかし、他の手法で負けている人は新しい手法を学ぼうとしても、だいたいは上手くいかない。悪い癖が身についてしまっているからだ。私にもそういう時期があったからよくわかる。さきに挙げた人は、どう見ても他の手法でも負けていそうだった。分足チャートの見方も勝っている人間のそれだとはとても思えないものだったし。

前にエッジについて書いたけれども、ああいう根本的なことを理解できていない人がボルマンの手法をやると壊滅的なことになってしまう。これは読んだときからわかっていたことだ。ボルマン自身がセットアップの形より大切なことがあると何回も強調しているのに、そういうことを理解できないだろうからだ。そういう人にとってはあの本は「かえって害にな」ってしまう。

(…) ちなみに、プルバックが衰えたあとのトレンド方向へのトレードほど勝率が高いトレードはない。 (…) ( 112 頁)

ボルマンははっきりこう書いている。利確が 10pips 固定の手法では勝率が命なんだから、これはとても大事な言葉になる。だからこそボルマンもプルバックからのトレンド復帰の手法から書きはじめているわけだ。こういう言葉をきちんと読めずに、順番を間違えた学び方をして結果が出るとは思えない。トレンドが出ているときにすら利益を上げらない人間が、スキャルピングのレンジブレイクでトレードしようとか自殺行為だっつうの。

5 月・ 6 月あたりの USDJPY とかクロス円では、プルバック系のトレードでバンバン取れた。トレンドが出まくっていたから。その後はトレンドが発生しにくい期間が続いた。とうぜんプルバック系のトレードでは取りにくい。単純な話だ。じゃあ、取りにくい期間はどうするか。素直になにかを身に付けようとする人間なら、次に取りやすい時期が来るのを待つだろう。ところが、頭の悪いひとは「プルバック系はチャンスが少ないからブレイク系で」とか考えてしまう。本当に阿呆だと思う。お前はトレンド系のトレードすら身に付けてないんだろ ? それなのにレンジブレイクやんの ? さきのボルマンの言葉をふつうに読めば、プルバックが衰えたあとのトレンド方向へのトレードにくらべるとそれ以外のトレードは勝率が低いということになる。勝率が命の手法で勝率が低いトレードから学ぼうとするなんて、私の目から見れば完全に狂気の沙汰だ。たとえ勝率が低いトレード手法でも自分なら身に付けて勝てるようになるという根拠のない自信を持っているのだろう。狂っている。

教えられたことができないひとってのは、教えられたことをやろうとしてできないのではなくて、教えられたこととは違うことをやっている場合が多い。私はボルマンの手法を薦めはしないが、どうせやるなら素直に、考えてやれよとは思う。トレードは難しいことではないけれど、阿呆が勝手なことやって勝てるほどには甘くねえよ。

エッジを手にする

根本的にまちがっている人について前回書いた。昔の私のことだ。テクニカル分析の勉強と検証を何千時間もやったし、それ用のプログラミング言語を覚えてシステムトレード的なバックテストもずいぶんやった。 1 日 4 時間くらいの睡眠でそんなことを 2 年くらい続けて、腰を壊しもした。

そういう努力がまったく無駄だとは思わないし、その期間にプラス収支を出せるようにはなった。ただ、それは分析技術や相場勘を身につけたからではない。そういうものだけを追い求めていると、奥へ奥へと迷い込む危険がある。

前回出したコイン投げでエントリーする例にもどる。あの例の場合でエッジを持つためには、ルールを変える必要がある。 5 割を超える勝率を出すためにエントリーの方法を変えたり、リスク・リワード比を改善するために利確と損切りの数値を変えたりといったことだ。(スプレッドの不利を縮小するために、利確と損切りをどちらも遠ざけてエントリー回数を減らすというのも決定的ではないが有効な方法だ。)

たとえば、サポートとレジスタンスという概念を取り入れてエントリーのルールを変更したとする。もしその変更で勝率が 5 割を上回ったのなら利益が残る。あなたはエッジを持ったのだ。単純で当たり前のことなのだが、エッジとはそういうことなのだ。

勝ちと負けが混在するなかで、全体を見ると利益が損失を上まわっている。これがエッジを持った状態だ。負けは当たり前に存在する。個々の賭けが集まった雲として結果を見る。そのためには確率論的な世界観と一貫性を持たなければならない。というより、それらを身に付けるためにこそ、さきほどの例のようにトレードを考えるのだ。

まずは確率論的な世界観。これを骨身に叩き込んでから分析技術。この順番が逆になると、本当に苦労する。で、確率論的な世界観を身に付けるには、まずは自分の一貫性を保つことだ。一貫性がない行動をしていては確率もくそもない。

たとえば、ダマシにやられて悔しくて、次はやられまいとその原因をさがす。そしてそれを見つけたつもりになって次は別の方法でエントリーする。こういうのは最悪だ。一貫性と縁を切ってしまっている。

一貫性のないそんな努力を続けていても、どこにも辿りつけない。まずは仮説を立てて、過去データでそれを検証して、そして少ない枚数で気楽に試行。これがやっぱり有効だ。トレードで勝っている人のほとんどが言う当たり前のことなんだけど、負けてる人はこういう当たり前のことを実行できない。上手くやろうと裁量でドタバタやって延々負け続けてるような奴は、後ろ向きに進んでいるだけだ。やればやるほど一貫性と確率から離れていってしまう。負けを受け入れないとエッジは獲られない。

エッジ

トレードの世界ではエッジという言葉がよく使われる。優位性という意味だ。当たり前だがこれがないと生き残れない。負けている人がなによりも欲しいものだろう。

しかし、負けている人ってのは、このエッジというものについて根本的な勘違いをしている場合が多い。今の波の到達目標値をぴたりと当てられるテクニカル分析理論。数 pips の逆行すらなくエントリーサインを出してくれるテクニカル指標とそのパラメーター。そういうところにエッジはない。あさってのほうを向いてしまっている。

そうではなくて、たとえば利確 31pips ・損切り 30pips で固定して 1 日に 09:00 と 16:00 と 21:00 の 3 回エントリーするとする。売りか買いかはコインを投げて決める。利確と損切りの値が違うのはスリッページ起因の差を吸収するためだ。この場合だと、スプレッドも含めて利確のほうが損切りより遠いので、試行回数を増やしていけばプロフィットファクターは 1.0 を切るだろう。経験からの勘だと 0.9 前後だろうか。

0.9 。 10 万円取って、 9 万円取られて 9 万円取って、 10 万円取られて、で差し引きで 1 万円の損というような収支だ。なにひとつ勉強せずにコイン投げで賭ける場合でこの数字。これをここでのスタートラインとする。(余談だが、こうやって考えても FX はショバ代が安い。競馬…。)

必死にテクニカル分析について勉強して、月単位のプロフィットファクターでこのスタートラインの 0.9 すら下回っている人。そういう人の努力は完全に間違っている。よーいドンで後ろ向きに走っていく人のようだ。

今週は 2 勝 2 敗

ここ 1 か月ほど、ほとんどトレードをしていなかった。急な事情で人手が足りなくなった知り合いの農作業を 9 月頭から手伝っていて、それでも途中までは夜にはトレードしていたのだけれど、へばってきた 10 月なかばから先週末までは 3 トレードのみの +20pips 。そのあいだに競馬で 100 万近く負けているし手伝いは無償でやっているしで、その期間の単純な収支は完全にマイナスだ(トレードは 60 枚)。

そんな状況のなか、先週末に歩けないくらいに腰痛が悪化して、月曜と火曜は手伝いを休んで家にいた。そうなるとチャートが目に入って、エントリーできそうな場面にでくわしたりする。しかしひさしぶりのトレードとなると、一発目は勝ちたいという意識が働いて、エントリーが苦しいのなんの。ひさしぶりであろうがこの一回に意味はないと考えつつも、やはり初っ端の一発は気にしてしまう。資金管理的にも精神的にも問題のないはずの枚数で、数をこなせばエッジが効いてくると経験からも知っているはずなのにだ。まだまだ修行が足りない。

と書いてみたが、これは修行の問題ではないな。単純に、エントリーをきちんとルール化していないからいろいろと考えてしまうのだろう。ただ、もともとがエントリーは裁量の余地が大きいスタイルでやってきたし、それに加えて今は利確と損切りのルールを本来のものから変更しているので、エントリーパターンも変えている。ルール化できるほどには経験値が溜まってはいないというのが実情でもある。

USDJPY は日足で動きはじめた感じだし、伸ばせるルールに戻したい気もするが、そもそもいつから本格的にトレードに戻るかもわからない状態。先を考える状況ではないか。

資金管理

基本的なことから書いてみる。賭け方によって確率の使いかたは変わる。コインの裏表を当てる賭けがあるとする。当たったときの払い戻しが 2.1 倍でテラ銭なしの場合、回数無制限なら美味しすぎるギャンブルだ。やらないバカはいまい(じつはそういうバカがたくさんいるというような、行動経済学的な話はおいておく)。

しかし、回数は無制限なのだけれど、当初の資金が 100 万円しかなくて 1 回に 50 万円賭けなければならないとしたらどうなるか。さらに進めて、最低賭け金が 100 万円で当初資金も 100 万円ならどうなるか。

これが資金管理だ。それは単純に資金を守るためだけのものではない。資金管理によって賭けの性質はがらっと変わる。

受け入れる

ひとつ前の記事が舌足らずな内容になってしまったので補足しておく。

「トレードで不確実性を受け入れるためには、人生でそれを受け入れる努力をし続けるしかない」と結んだが、まず必要なのはタレブが言うように「どうやって実行するか」を工夫することだ。

トレードの場合、確率論や不確実性を受け入れるためには、 1 回 1 回の結果に意味づけをしないことが必要になる。損切りになろうが利確になろうが、その 1 回の結果に意味を持たせてはだめだ。長くやってりゃ分かるが、どっちになるかなんてけっきょくは事前にはわからないんだから。

それを、 1 回損切りになったり 1 日マイナス収支になったからって精神的に悶えるようなトレードをしていては、いつまでたっても見込みはない。しかし、そういうタイプの人が精神的に悶えないためにする努力は、これから先の「この 1 回」で損しないために研究することだったりする。もちろんそんな方法なんて存在しないから、またすぐに精神的に悶えることになる。努力の方向がまちがっているのだ。

たとえば、損切りになった後のトレードでエントリーや手仕舞いが乱れるっていうのは 1 回の結果に意味づけをしてしまっているわけで、絶対に改善しなければいけない。でも、「損切りの後でも精神を乱さない」っていう決心ではどうにもならない。そこをルールで工夫するのが「どうやって実行するか」の部分だ。そのルールにはデメリットもあるだろうが、とにかくそこを工夫する。

で、そのルールのデメリットだとか、ルール通りやっていて損失が続くとき(当然あり得る)だとか、受け入れなければしょうがないもろもろってのはあるわけで、それを受け入れるためには実生活での努力も必要になる。個人的にはそうだった。

急いでいるときに赤信号に引っかかったり、セットアップが整いつつある大切な場面で来客があったり、そんな無数にあるいろいろなことを楽しむようにしていたら、トレードでのいろんなできごとも受け入れやすくなっていった。逆もまた然りで、トレードでのいろんなできごとを受け入れるための工夫を続けているうちに、実生活でのいろいろなことも楽しみやすくなってきた。

いくらテクニカル分析を研究しても、いくらテクニカル指標の検証をしても、いつまでも負け続けている人はいっぱいいる。利益を上げていくっていうのは、そういうこととは違うことだ。儲け方ってのは予測とは違った技術だからだ。

そしてさらに、確率論の世界で生きるためにはじつは資金管理こそが最重要事項なんだけれども、これはまた別の機会に書く。

『まぐれ――投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』 ナシーム・ニコラス・タレブ

まぐれ――投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか『まぐれ――投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのかナシーム・ニコラス・タレブ 著 望月衛 訳(ダイヤモンド社)、読了。

 話していて一番イライラするのは、どう行動すべきかを説教する連中だ。どう行動すべきかなんてみんな知っている。問題なのはどうやって実行するかで、何をすべきかではない。(…)( 281 頁)

本書で著者は、確率や統計や不確実性について間違った考えを持っているバカを徹底的に罵っている。その本書の終わりのほうに出てくる文章だ。

確率論を学んでも、確率論を受け入れた生き方ができるとは限らない。不確実性についての知識をいくら積んでも、人生において不確実性を受け入れられるようになるとは限らない。

そもそも、人間はそんなものを受け入れられるようにはできていないのだから。しかし、トレーダーとして生きていくためには、トレードという場所ではそれらを受け入れることが絶対条件だ。そしてやっぱり、トレードで不確実性を受け入れるためには、人生でそれを受け入れる努力をし続けるしかない。

楽なトレード

ここのところ用事がいろいろとあって、この 3 週間ほどは夜になるまでは相場を見る時間がなかった。その夜も、やめていた酒を飲みながらチャートながめる程度だ。

1 時間足でのエントリータイミングを待つような時間はないし、疲労で判断力が落ちているので 5 分足でスキャルピングをしても負けるだけだろう。なのでいまはトレードスタイルをまるっきり変えてトレードしている。

損切り 10pips ・利確 15pips で固定して、 15 分足で見て 20pips 以上動く余地のある場面で入るだけ。入ったら基本的にはチャートは見ない。どちらかの注文が刺さるまでは放置しておく。今のところはルールはこれだけだ。

2 日目にすこし熱くなって 4 連敗 -40.8 pips という日があったが、今までのところは 14 勝 12 敗で勝率 53.8 % のリスクリワード比は 1.48 (とうぜんほぼ固定)・プロフィットファクターが 1.72 という結果になっている。獲得 pips は 88 。サンプル数が少なすぎるが、こんなトレードでも勝てるもんだなとあらためて感じてもいる。すこしずつトレードルールを改善していくつもりなのでもっと成績が上がるかもしれないが、この成績を維持するだけでも御の字だ。楽にやっているだけなんだもの。

エントリーした後でたまたまチャートの画面を開いていて、スキャならここ抜けたらヤバいってところを抜けてしまうところを目にする。即切って -3pips とかで収めておきたいんだけれど、ルールなんで我慢してチャートを閉じる。そのまま -10pips の損切りになっていることが多いんだけれど、たまに反転して利確になっていたりもする。このルールでやってみて、確率を受け入れることの大切さを再確認できた。あとひと月ほどでまたフルタイムでチャートを見ることができるようになるだろうけれど、そのときには元のトレードスタイルにずいぶんと変化が出ているだろうと思っている。

負けている人に対するヒントになるかと思って書いてみたけれど、これだけじゃ伝わらないかな。これでわかる人はもう勝っているだろうし。また時間があれば書いてみます。

『アナタはなぜチェックリストを使わないのか ? 重大な局面で “正しい決断” をする方法』 アトゥール・ガワンデ

『アナタはなぜチェックリストを使わないのか ?  重大な局面で 『アナタはなぜチェックリストを使わないのか ? 重大な局面で “正しい決断” をする方法アトゥール・ガワンデ 著 吉田竜 訳(晋遊舎)、読了。

手術の安全性を高めるための WHO のプロジェクトで主導的な役割を務めた著者が、ミスを減らすためにチェックリストがいかに役に立つかを解説してくれている。

高度で専門的な教育を受け、長い研修期間を過ごし、そのうえでじゅうぶんな実務経験を積んだ医者でさえもミスをおかすことはあると著者は言う。そしてその発生確率は、意外なほどに高い。どうすればそれを減らせるのか。著者が参考にしたのは、医療業界と同じように高度に専門化された業務を行う建築業や航空業界などだった。それらの現場でチェックリストが有効に使われているのを著者は発見する。

 誤解されがちだが、チェックリストはマニュアルではない。高層ビルの建設用であれ、飛行機のトラブル解決用であれ、全ての手順を詳細に説明するものではない。チェックリストは、熟練者を助けるためのシンプルで使いやすい道具なのだ。素早く使えて、実用的で、用途を絞ってあるという特性こそが肝要だ。( 149 頁)

きちんと作成されたチェックリストなら、トレードでもきっと役に立つだろう。私は自分で使うためのチェックリストを練り上げているところだ。

(…) 少し目を凝らせば、素晴らしい能力とやる気を持った者でさえも、同じミスを何度も繰り返していることに気づくはずだ。ミスは起き続けている。今までのやり方を変えていかなくてはならない。
 チェックリストを試してみて欲しい。( 213 頁)

『ファスト & スロー あなたの意志はどのように決まるか ? 下』 ダニエル・カーネマン

ファスト & スロー あなたの意志はどのように決まるか ?  下『ファスト & スロー あなたの意志はどのように決まるか ? 下』ダニエル・カーネマン 著 村井章子 訳(早川書房)、読了。

「フィードバックと実践」、「フレーミング」、「メンタル・アカウンティング」、「損失回避」、そしてもちろん「プロスペクト理論」。トレードを改善するための材料が山盛りだった。

こういう本をきちんと読み込んで自分のトレードを見直していくことのほうが、そこらにある手法本を読みあさるより、トレード改善にはずっと役に立つ。

ただ、人間の自由意思についての書物としては、スピノザの『エチカ』のほうがはるかに新しくて刺激的だ。

ウィザードブックシリーズ 13 新マーケットの魔術師』 ジャック・ D ・シュワッガー

ウィザードブックシリーズ 13  新マーケットの魔術師ウィザードブックシリーズ 13 新マーケットの魔術師』ジャック・ D ・シュワッガー 著 清水昭男 訳(パンローリング)、読了。

同著者の前書『マーケットの魔術師』にくらべると登場するトレーダーたちが小粒になっている気がするが、それでも相場本としては貴重なおもしろさだ。

『マーケットの魔術師』 ジャック・ D ・シュワッガー

マーケットの魔術師『マーケットの魔術師』ジャック・ D ・シュワッガー著 日興證券開発運用部訳(日本経済新聞社)、読了。

同じシリーズの「株式編」はすでに読んであったが、あれよりもはるかにおもしろい。出てくるトレーダーのスケールも魅力も段違いだ。各トレーダーたちのトレードスタイルは多様だが、それでもしかし、彼らには共通の精神的態度があることが興味深かった。

ウィザードブックシリーズ 14 マーケットの魔術師 [株式編] 米トップ株式トレーダーが語る儲ける秘訣』 ジャック・ D ・シュワッガー

ウィザードブックシリーズ 14  マーケットの魔術師 [株式編]  米トップ株式トレーダーが語る儲ける秘訣ウィザードブックシリーズ 14 マーケットの魔術師 [株式編] 米トップ株式トレーダーが語る儲ける秘訣ジャック・ D ・シュワッガー 著 増沢浩一監 訳(パンローリング)、読了。

手法ではなく姿勢において参考になるところがいくつもあった。

ウィザードブックシリーズ 201 続マーケットの魔術師 ――トップヘッジファンドマネジャーが明かす成功の極意』 ジャック・ D ・シュワッガー

ウィザードブックシリーズ 201  続マーケットの魔術師 ――トップヘッジファンドマネジャーが明かす成功の極意ウィザードブックシリーズ 201 続マーケットの魔術師 ――トップヘッジファンドマネジャーが明かす成功の極意ジャック・ D ・シュワッガー 著 長尾慎太郎 監修 山口雅裕 訳(パンローリング)、読了。

多くの人が言うように、この『マーケットの魔術師』シリーズは『欲望と幻想の市場』などと並ぶ相場本の最高峰のひとつだろう。なかでも、第一弾の『マーケットの魔術師』は私の大好きな本で、今でも原書版でたまに読み返す。エド・スィコータ編は本当に素晴らしい。

そんな超有名シリーズの 10 年ぶりの新作なのだが、ヘッジファンド・マネージャー編ということで、個人トレーダーにはまったく関係ないクオンツ的な話じゃないのかと疑いつつ読みはじめた。

ところが、そんな懸念は無用だった。登場するすべてのトレーダーの発言に、個人トレーダーにとって貴重な教えがたくさん含まれている。

シリーズの 2 冊目と 3 冊目は、 1 冊目にくらべると落ちると考えていたのだけれど、今回のこの本は 1 冊目に並ぶほどの面白さだ。この本も私は何度も読み返すだろう。

 繰り返し、僕は部下のトレーダーたちに一言アドバイスをします。うまくいくことを増やして、うまくいかないことは減らしなさい、と。 (…) ( 31 頁)

スティーブ・クラークのこの言葉は、トレードをよくするためのけっきょくは唯一の手段だ。聖杯は外にはない。

『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たちマイケル・ルイス

世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たちマイケル・ルイス 著 東江一紀 訳(文藝春秋)、読了。

リーマン・ブラザーズの倒産に象徴される 2007 年からの世界的恐慌。その原因はサブプライム・ローンの破綻だった。そのサブプライム・ローンの焦げ付きを予測し、崩壊に賭けた 3 組の男たちを主人公にしたノン・フィクションだ。

サブプライム住宅ローンがいかに詐欺的なものであったのかが、全編を通して語られる。著者によれば、それは金融業界が下位中流層や貧困層を食い物にするためのものだったのだ。それに対する憤りが、この本の底に流れている。といっても、筆致はどこまでも冷静なのだが。

マイケル・ルイスは本当に良い作家だ。